特集コンテンツ 都立公園の歴史と自然シリーズ第2話 都会の水郷 水元公園

オニバス 生態の不思議

水元公園の魅力

水元公園がある葛飾区は東京の東北端に位置し、いわゆる東京の下町に属します。平坦地を生活舞台とし、しかも地理的には荒川、江戸川、中川、綾瀬川などの河川に取り囲まれているのが、ほかの区とは異なった点です。そして水元公園を抱え込むように流れている大場川の対岸は埼玉県三郷市、その先に合流する江戸川では千葉県松戸市と境を接し、それが都県境になっています。
水元公園は水と緑が調和する美しい公園です。公園面積は約92haに及び、灌漑用水と遊水地を兼ねた「小合溜」が北側から東側を囲み、水郷景観をもった特異性のある地域といえます。そのため、この付近は「東京の水郷」と呼ばれています。

水元公園の地形

昔はこの地域には利根川の水系が多くあり、水元付近を含む葛飾区など下町・下流域は沖積層の低地で、東京都区部全地域の地下はほとんどこの沖積層で構成されているといってもよく、東京層または上部武蔵野層と呼ばれています。このように下町一帯から山の手の谷や武蔵野の低地帯にかけての層になっていて、葛飾区内には一ヶ所の台地もなく、利根川沿いに発達した沖積層の低地が広がっています。表土より8mから15m程度までは、極めて軟弱な砂礫と粘土を主成分としており、その中にはホタテガイ・ハマグリ・アサリ・カキ・アカガイなどの貝殻が混じって、この地域がかつて海であったことを証明しています。

水害から守る桜土手と小合溜

徳川家康が江戸城へ入った江戸時代初期には江戸の町にたびたび出水があったため、利根川(現江戸川)が江戸湾に流下する危険を感じて、本流を上野武蔵の国境からさらに東流させ、現在のように千葉県銚子口から太平洋に流したのです。その事業で当時は本流を利根川、現江戸川が古利根川と呼ばれていました。江戸中期以降その流路の変更事業がたびたび行われ、江戸の町を洪水から守るため、古利根川沿いに堤や溜池を築いたのが現在の桜土手や小合溜になっています。享保年間、八代将軍吉宗の時代の頃です。
ところが、下総国二郷半領(現三郷市)でもたびたび洪水が起こり、この桜土手に阻まれ被害がでました。二郷半領の村人が土手を切り開き、水没から村を救った歴史がありました。水元公園の西端の猿町入り口に隣接する大場川の閘門橋には、水門の堰を開け閉めするモニュメントがあり、往時の人々の自然との闘いの記憶を彷彿とさせます。

水元公園を彩る花々

公園の区域はこの桜土手と小合溜(旧古利根川)にはさまれた河川敷が主になっており、水田や畑だったところです。植生もハナショウブなど水生植物や、水に強いハンノキ、ラクウショウ、ヤナギ、ポプラなどの樹木が多いのも特長です。桜土手の桜はソメイヨシノ、ヤマサクラ、サトザクラなど「五色桜」ともいわれ、桜花期には4kmのトンネルは見事です。
この豊かな植生から昆虫も多く生息し、野鳥の保護区(バードサンクチュアリ)は野鳥観察のメッカになっています。当然、小合溜という水域には多種の魚類が確認されています。

園内の施設

そのほかの施設としては少年キャンプ場、ポプラ並木、冒険広場、メタセコイアの森、水元グリーンプラザ(旧緑の相談所)、野鳥観察舎、せせらぎ広場、野外ステージ、水元大橋、涼亭(レストラン)、アサザ・オニバス自生地(水産試験場跡地)、かわせみの里(区営)等、とくだん運動施設や有料施設はありませんが、公園の中心にある中央広場は、思いっきり飛び回れる約10haの草地広場があり、空がでっかく、ふるさとを思いださせ、身も心ものびのびしてくる公園です。

自然豊かな水郷景観をつくりだす江戸時代に誕生した溜池「水元小合溜(みずもとこあいだめ)」

水元小合溜は、享保14年(1729年)八代将軍徳川吉宗の指示により、紀州から招いた治水の権威者・幕府勘定方吟味役井沢弥惣兵衛が、もともと利根川の旧河川だったものを、江戸を水害から守るために行った中川の開削事業により現在のような形になったもので、遊水地としての役割とかんがい用水の源水地としての機能を持つ溜池になったものです。

この小合溜の成立により、江戸は水害から守られると同時に、ここを水源とする上下之割用水(かみしものわりようすい)が作られ、この水が東葛西領50余か村のかんがい用に利用された歴史ある溜池です。
ちなみに「水元」という地名は、このことに由来し、行政の地名として使用されるのは明治22年の水元村の成立以降のことです。
水元小合溜一帯は、昭和25年(1950年)に都立江戸川水郷自然公園に指定され、昭和40年から都立水元公園として整備を開始し、現在は、都内に唯一の水郷景観を持つ公園として、来園する多くの人々に憩いと潤いを与えています。

出典:財団法人東京都公園協会発行「都市公園 No.134」の「カムバックかわせみ作戦-都立水元公園・水元小合溜水質浄化対策事業 井上洋二郎・葛貫貞夫」より。